2023年6月25日
「建築業者」はたくさんいるが、「プランニング」の専門家は非常に少ない
私の事務所では、設計監理の傍ら、間取りのチェックもしています。普通の施主が間取りに関しどれだけ知識がないか、ということがよく分かると思いますので、実例を載せたいと思います。
この施主は私の本の読者ですが、業者がつくったこの間取りを見てほぼ満足し、はんこを押す寸前でした。しかし一応念のためということで、私にプランチェックの依頼をされたのです。
こんなにある間取りの欠点
玄関:この玄関の一番悪いところは動線です。玄関に入って、上がり框のところで90度左折し、そして廊下で90度右折し、4~5歩歩いてトイレの前で90度右折し、ドアを開け、5~6歩歩いてやっとリビングに到達できるという、なんとも入り組んだ形状になっています。距離がある上に、くねくねと方向転換しなければなりません。
廊下:西側に大きなFIX窓があり、西日がもろに当たり、夏の室温上昇は必至でしょう。
リビング:東にはボウウィンドウがついています。庭は東なのに、わざわざ南から出入りしなければならず、非合理的です。
- 南側のはき出し窓の幅は2.6mですが、このサイズの窓は、大変重いことをご存知ですか?
キッチン:玄関やトイレに行くために、わざわざリビングを迂回し、長い距離を移動しなければなりません。なぜ廊下との境に扉をつけないのか理解に苦しみます。
洗面脱衣室:洗濯物はどこに干されますか? 2階ベランダに干す場合、洗濯機から2階ベランダまで役17mもの距離があります。またくねくねと何度も体の向きを変えながら歩く必要もあります。1階庭に干すのならまだマシですが、それでも約9mあり感心できません。
階段室:この階段は、上り始めて左90度、中間で左180度、そして上りきったところで右90度と、非常に労力を必要とされる形状になっています。
2Fホール:ホールに5畳ものスペースを割いています。ファミリールームのように、何かをするスペースとお考えなのかもしれませんが、東西南北全ての方向にドア・引き戸があり、壁面が少なく、何をするにしても中途半端な感じがします。結局使いにくく、「ただ無駄なスペース」になるのではないかと推測します。
子供室1:布団を干すときなど、ベランダに行くためには、他の部屋を通らなければなりません。
子供室2:通風が悪く、夏は蒸し風呂状態になります。
寝室:布団を干すとき、以下のような動きになります。①布団を抱える、②狭い通路を布団を持ちながら、カニ歩きをする、③布団を抱えながら、あるいは一旦下ろしてドアを開ける、④カニ歩きでベランダに出る、といったような、なんとも大変な動きをしなければなりません。
教えてもらったら分かるけど・・・
皆さんは、解説を見れば、「なんだ、そんなの、分かりそうなもんだろ」と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかしそれは解説を見たから分かったのであって、解説がなければ、この施主と同様、多くの方々は、間取りの利点欠点は分からないものなのです。
問題点は全部で50あり、私の採点では100点満点中わずか30点でした。(紙面の都合があり、抜粋して掲載)
ワンポイント:施主自身や業者のプランをチェックしてくれるプランニング事務所もある